事業概要
1.デリバリーPLAY&PHOTO
障害や重い疾病を持つ子どもたちの自宅を訪問し、特性に合わせたおもちゃや遊びを紹介。遊んでいる子どもと家族の様子を写真撮影し贈呈する。
2.グループを対象とした遊びと写真撮影のワークショップ
障害児団体などのグループ活動の会場に赴き、遊びと写真撮影のワークショップを開催
3.ごろりんART PHOTO
座位を保てない障害をもつ子どもに向けた記念写真サービス。寝転んだ子どもの周りをデコレーションしたアート作品を撮影。
グッド・トイが引き出す子どものチカラ
おもちゃコンサルタントの安田伸枝さんと夫の一貴さんによる「笑顔の向こうに繋がる未来プロジェクト」は、重い病気や障害がある子どものいる家庭を訪問して遊びをサポートし、遊びのなかで生まれる家族の素敵な表情を写真に残す活動を行なっています。
伸枝さんは障害児保育園の保育士、一貴さんは理学療法士。さらに二人とも病気の子どもに対する遊びの専門職であるホスピタル・プレイ・スペシャリストの資格も持ち、平日は病院や施設で勤務する傍ら、週末に家庭訪問の活動に取り組んでいます。
「訪問している中には、感覚が過敏で『鉄琴の音が苦手』というお子さんもいるのですが、今回の助成金でそろえることができたグッド・トイなどの質のよいおもちゃにはとても反応がいいんです。ペンタトニック※1で遊ぶと、もっと聴こうと顔の向きを変えようとしたり、やってみようと手を伸ばしたり、普段はない反応を見せてくれるんですよ」と、おもちゃの質の大切さについて語ってくださいました。
※ 1 アウリスグロッケン ペンタトニック(アウリス社)…澄んだ透明な音色が特徴の鉄琴。グッド・トイ
手先以外を動かすことができない女の子。視野を広げるためにベッドの向こうに立てかけた鏡を見ながら上手に魚を釣っていきます。真剣な表情!
心を動かす遊びのチカラ
職場の組織の枠からもう一歩深く子どもと家族に寄り添って遊びと発達をサポートしたいと、このプロジェクトを始めた二人。
活動に使うおもちゃはグッド・トイ中心で、障害児用に特別に作られたものではありません。「大切なのは、その子がどうしたらおもちゃを楽しめるかという、使い方の工夫です」と伸枝さん。
例えば音が出るおもちゃは「自分で鳴らす」だけでなく、振動に触れて音の感触を楽しんだり、耳を傾けて音の違いを聞き分けたり、お母さんの手のぬくもりを感じながら一緒に音を鳴らしてみたりと、目で見る、耳で聴く、触れて感じるなど、特性に合わせた感覚刺激を伝える工夫を重ねます。
初めは「うちの子は遊べないから…」と口にするご家族も、大小の刺激で子どもの心が動き、視線や表情が生き生きと変わっていく様子が見えると、遊びの大切さを理解し、喜んでいただけるそう。親子のコミュニケーションに笑顔と笑い声も増えていきます。
記念品の手形キーホルダー作りのため、手のひらに色を塗っていきます。「ママ、なにこの感触!?」
写真のチカラで家族、友だち、社会を繋ぐ
おもちゃや声かけに反応した、今、この表情!を逃さずにシャッターを押す一貴さん。笑顔はもちろん、涙や驚き、何かに気づくといった、小さな感情の動きや家族とのふれあいを丁寧に記録していきます。
ホームページにも掲載されたこれらの写真は、家族を繋ぐ大切な思い出、記念写真であるだけでなく、同じ環境にある他の家族も勇気づけます。
障害をもった子どもと家族には、社会からの孤立や経済的な問題など重い課題が山積。写真を社会に発信し、これらの課題解決に向けた問題を提起することも活動の大切な目的です。
より多くの子どもたちに遊びを届けるため、利用者の料金負担なしで活動できるようさまざまなセクターとの恊働を探りながらプロジェクトを広げていきたいと、これからの目標を語ってくださいました。
活動のひとつ「ごろりんART PHOTO」。家族が考えたテーマの背景でパチリ。その日に遊んだおもちゃに囲まれて楽しい気持ちが表情に表れます。